小林政明法律事務所

戸籍のしくみと相続人調査①

                     戸籍のしくみと相続人調査①

1.はじめに
 知ってるようで知らない「戸籍」 のしくみ。結婚すると戸籍はどうなるの?離婚すると戸籍はどうなるの?そもそも戸籍って何?何のために使うの?今回は、そんな素朴な疑問に対する答えや、バツイチの由来やバツイチを消してしまう方法が本当にあるのか等の小話など、戸籍に関するお話を何回かに分けてしてみようと思います。
 
2.戸籍とは
 そもそも戸籍とはなんでしょう。戸籍とは、「人の出生から死亡に至るまでの親族関係を登録公証するもので、日本国民について編製され、日本国籍をも公証する唯一の制度」とされています(法務省HPより)。いつ誰の子として生まれ、いつ誰と結婚して子が生まれたか。離婚をしたか。すでに死亡しているか。はたまた愛人との子を認知していたかなど、戸籍を調べることで、その人の一生の身分関係がわかるのです。
 では、こうした戸籍を調べることが必要になるのはどういった場合でしょう。それは、主に相続人調査をする場合です。ある者が死亡して相続が開始すると、遺産分割協議という遺産を相続人の間でどう分けるのかといった協議を行う必要性が生じます。この協議を行う場合、一人でも相続人となる者が欠けていると無効となってしまいます。そのため、相続人となる者全員を正確に調査しなくてはならないのです。
 
3.戸籍のしくみと相続人調査
 では、戸籍で相続人を調査すると言ってもどのように調査すれよいのでしょうか。その説明をしながら、戸籍のしくみについて解説してみたいと思います。
(1)前提として、法定相続人についての知識が必要になりますので、少し解説しておきます。
 まず、亡くなった方(被相続人)の配偶者が生きていれば、常に相続人となります。
 そして、配偶者の他に相続人になる可能性のある方は被相続人の
 ①子
 ②直系尊属(両親等)
 ③兄弟姉妹です。
 ①から順に優先に相続人となれるものとされており、子が誰一人いない場合に初めて直系尊属が相続人になれるといった具合です。(厳密にいえば、代襲相続というものがあります。)
 そのため、まず行うべき相続人の調査は、「配偶者がいるか」ということ、及び先順位の①「子がいるか」ということになります。
(2)ここで、現在の制度における戸籍のしくみについてお話しておきます。現在の戸籍制度のもとにおいては、原則として『一組の夫婦と未婚の子』で一つの戸籍が作られることになっています。子は婚姻届けを提出することで、親の戸籍を抜け(戸籍を抜けることを「除籍」といいます。)、夫婦で新しく作られる戸籍に入ります。昔のように、男性側の家の戸籍に移るのではありません。夫婦は、婚姻届において、どちらかの姓を名乗ることを決定しますが、選んだ姓をもともと名乗っていた方が新戸籍の「筆頭者」となります。別に筆頭者が偉いわけでもなんでもなく、この呼び名は昔の戸主制度の名残に過ぎず、現在はただの戸籍の検索名のような扱いになっています。夫婦のもう一方は「配偶者」という肩書となり、筆頭者の戸籍に入る形になります。そして、夫婦の間に子が生まれると、出生届を提出することで当然にこの夫婦の戸籍に入ります。
 戸籍にはその住所のようなものがあり、これがいわゆる「本籍」というものです。本籍地は日本中のどこを選んでもよく、皇居や東京ドーム等の所在地を選んでもよいのです。(ただし、戸籍は本籍地の存在する市町村役場で管理されるため、各種届出をしたり、戸籍を取りに行ったりする際に、実際に住んでいるところから遠いと不便であるため注意が必要です。)婚姻の際、婚姻届に新しい戸籍の本籍地としたい地番を自由に選んで記載し、役所に提出するのです。提出先は、婚姻届に記載した新しい本籍地の所在する市町村役場である必要はありません。また、「転籍」といって自由に本籍地を変えることができ、異なる市町村に移る場合には、新たに戸籍が編製されます。
(3)では、話を相続人調査に戻します。配偶者の調査は容易です。(あまり配偶者がいるかが不明で問題となることはありませんが、戸籍の話とも関連させるため、理論上どのようにすれば確認できるかについてお話します。)先ほど述べたように、現在の戸籍は一組の夫婦と未婚の子で構成されているので、配偶者がいれば被相続人と同じ戸籍に入っていることになります。よって、被相続人の現在の戸籍を見て配偶者の記載があればそれで完了です。もし、記載がなければ色々な場合が考えられます(※1)が、配偶者が不存在であることは確定します。また、現在の戸籍や除籍に配偶者の記載はあるが、死亡していることが記載(※2)されており、別途再婚をしていない場合も、配偶者が不存在であることが確定します。
 

※1戸籍は法律の改正により作り変えられること(「改製」といいます)があったり、本籍地を別の市町村に移す(転籍)ことで作り直されたりと、戸籍が新しく作り直されことはままあります。その際に、全ての記載事項が引き継がれ(「移記」といいます。)れば問題ないのですが、新戸籍編製の際に移記される事項は限られており、除籍された者についての事項は引き継がれないことになっています(戸籍法施行規則39条参照)。そうなると、新戸籍が作られるより前に死亡した者に関する事項は移記されませんので、新たな戸籍や除籍(※3)には離婚や死別した配偶者についての記載はないことになります。記載がない場合は、そもそも婚姻歴がないか、新戸籍編製前に死別又は離婚している(※4)などの可能性が考えられます。

 

※2ある者が死亡した場合、その者は戸籍から抜けます(「除籍」といいます。)。除籍される場合、その者の戸籍が白紙になるのではなく、現在の電子戸籍においては今までの記載は残ったまま除籍という印がつけられ、死亡した旨や死亡した日時が記載されます。まだ電子化を行っていない市町村の戸籍場合は、除籍マークではなく、除籍される者の名前に「×」がつきます。すでに配偶者が死亡していれば、こういった記載となっているのです。こうした記載が最新の戸籍や除籍(※3)にあれば配偶者が死亡していることは明らかです。

 

※3ある戸籍に在籍するものが全て除籍となると、その戸籍はクローズされて「除籍」となり、「除籍簿」に移され保管されます。子が婚姻等ですでに戸籍から出て行っており、被相続人の配偶者も死亡していたり、配偶者と離婚していたりするような場合は除籍になっている場合があります。

 

※4離婚をした場合、「筆頭者」はそのまま戸籍に残り、「配偶者」は、もともといた戸籍(自分の親の戸籍)に戻る(「復籍」といいます)か、自己を筆頭者とする新しい戸籍を作成してその戸籍に入ります。離婚した場合、除籍される側の「配偶者」は、前述の死亡した場合と同様の扱いがなされ「除籍マーク」ないし「×印」が付き、離婚した旨とその年月日、除籍後の戸籍の本籍地が記載されます。(バツイチの由来はここにありますが、色々な意味でこれはおかしいことを次の機会にお話します)

 
(4)では、次に子の調査はどのようしたらよいでしょうか。実際上、問題となるのはこの子の調査です。
 子がいつまでも同じ戸籍に入っていてくれたり、被相続人の婚姻歴等が複雑でなかったりすれば問題ありません。しかし、前婚があり、その相手との間に子がいたり、愛人の子を認知していたりして、思いがけないところに相続人となる子が存在する可能性もあります。前述のとおり除籍された者については、新戸籍が編製される場合に移記されないので、離婚をし、子が姓を変更して配偶者側について戸籍を出て行っていた場合など、現在の戸籍や除籍を見てもそういった子の存在は確認できないのです。また、認知した場合(認知により法律上の父子関係が発生します)、認知をしても子は母親の戸籍に入ったままで、父親の戸籍に入らないうえに、認知した旨の記載は、新戸籍編製の際親の戸籍上は移記されないことになっており、これも同様に現在の戸籍や除籍を見ても確認できません。そのため、正確に全ての子の存在を調査するには、その被相続人が生物学上生殖能力を獲得する10歳から死亡までのすべての過去の戸籍を調べ、子となる者がいないかを調査する必要があるのです。裁判所における手続きで相続人証明の資料として被相続人の出生から死亡までの戸籍類の提出が求められているのは、こうした趣旨なのです。もしかしたら、どこかで耳にしたことがあるかもしれませんが、これが「戸籍を追う」という作業なのです。
 相続人の調査としてどういったことが必要となるかについての理屈が分かったところで一区切りとしましょう。次回は、「戸籍を追う」といっても、実際に何をどうしたらよいのかを、これまた戸籍のしくみを説明しながらお話することとします。