小林政明法律事務所

隣地の樹木

 ご近所とのトラブルはできるだけ避けたい。今回は、そんなときに少し役立つかもしれない法律の知識をQ&Aの形でご紹介します。
 
Q1.隣の家の庭の木の枝が自己の所有する土地に入ってきている!落ち葉の掃除も面倒だから切ってしまいたい…。勝手に切ってもいいの?
 
A1. 民法233条1項は、「隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。」と規定しています。「切除させることができる」とあることから、勝手に切ってしまうことはできません。勝手に切ってしまうことは、最悪の場合、「不法行為」(民法709条)として損害賠償請求されてしまう事が考えられます。
 そこで、まずは隣人に切除を依頼してみましょう。それでも何も応じてくれないという場合には、民法233条1項に基づき「竹木の枝の剪除請求」を行う、または何らかの損害が生じていると言えれば「不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)」を行う、などの法的手段をとることも考えられます。
 
 
Q2.隣の家の木の根が自己の所有する土地に入ってきている!これも勝手に切っちゃいけないの?
 
A2.先ほどの木の枝を勝手に切ってはいけないことからすると、木の根も勝手に切ってはいけないとなりそうです。
 しかし、民法233条2項は、「隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。」と定めており、木の枝とは異なって根っこは土地の所有者が勝手に切ってしまってもよいという事になっています。
 
 
Q3.では、隣の庭の竹の根が自己の所有する土地に入ってきて、そこからタケノコが生えてきた場合は、勝手にとって食べてもいいの?
 
A3. これについては、まずタケノコは「天然果実」(民法88条1項)です。「天然果実」とは、物の用法に従い収取する産出物のことを指します。例えば動物の子、農作物や鉱物などのことです。果実を産出する物のほうは元物といいます。
 天然果実は、「その元物から分離するときに、これを収取する権利を有する者に帰属」します(民法89条1項)。
 竹について、「隣地の竹の根(地下茎)から生えた竹は、土地の天然果実である。」とした判例があります(最判昭35・11・29)。突然地面から生えてきたタケノコはその土地から生まれたものとして、土地の所有者のものとなるのです。よって、隣地の竹の根が自己の所有地に入り、そこから生えてきたタケノコは勝手に食べても良い!という事になります。
 
 
 Q4.隣の家の庭の蜜柑の木の枝が自己の所有する土地に入ってきており、その枝になっている蜜柑が落ちた場合には、拾って食べてもいいの?
 
 A4. 蜜柑もタケノコと同様に「天然果実」です。しかし、蜜柑の木は隣地に生えており、蜜柑は隣地の蜜柑の木から生まれたものであることが一目瞭然です。つまり、蜜柑は隣地の蜜柑の木の天然果実なのです。そうすると、蜜柑は木から落ちるとき、隣地または蜜柑の木の所有者がこれを収取する権利を有していたといえるため、隣地の所有者にその所有権が帰属するのです。
 よって、隣地の蜜柑の木から落ちた蜜柑は勝手に食べてはいけない!という事になります。
 
 
 Q5.落ち葉が隣の家の木から自己の所有地に落ちてきているときには、掃除をするよう請求することは可能なの?
 
 A5. 「落ち葉」も先ほどの考えからすると、「天然果実」であり、木の所有者にその所有権が帰属するようにも思えます。しかし、落ち葉は腐葉土として用いることを主な目的としているなどの背景事情のない限りは、木そのものの用法として収取されるものとはいえない場合がほとんどです。そのような場合には、持ち主は所有権放棄しているとも考えられ、無主物として誰の所有にも属さないといえます。そうであるとすれば、木の所有者に直接落ち葉の掃除をする義務は生じず、掃除するように請求することはできないでしょう。
 しかし、度重なる剪定や掃除の依頼にも応じてくれず、その落ち葉が大量であったり、どの木から生じているかが一目瞭然であったりするなどの場合で、かつ、木の所有者が何らの対策もとらなかった場合には、不法行為に基づく損害賠償請求することも、法律上は可能です。
 すなわち、少量の落ち葉について土地の所有者が掃除をすることも、木の所有者が落ち葉を掃除することも、どちらも義務としては存在するため、一概にどちらの義務かという事はできず、実際の状況を社会常識に照らしてどちらに義務があるかを判断することになるのです。
よって、まずは木の所有者に落ち葉が落ちないための剪定を依頼するなど、何らかの対策をとることを求めたうえで、法的手段をとることは可能であると言えます。
 
 
 ここまで、5つのケースについて紹介してきました。法律上の理論としてはこのようなことが考えられます。しかし、何か問題が生じたときはまず、お隣同士話し合って解決できることが一番であることには違いありません。法律上の理論がその解決の一助となれば幸いです。

以 上